プラスチックトランペットは何種類かあるのだが、恐らくこのpInstrumentsのHyTechが最高峰と言っても過言では無いと思う。
pInstrumentsと言うイギリスのメーカーで5年ほど前からイギリスでは販売されていたらしく、令和の6月に日本に上陸した新進気鋭のプラスチックトランペットなのだ。
まず、その見た目はメタル製のトランペットとの違いはわからない作りで、言わなければプラスチックだと誰も思わない程の仕上がりだ。
外観上黒いグリップが巻いてあるが、唯一このプラスチックトランペットの欠点で、チューニング管が2.8cmと短く大体1.5cm少々抜かないとチューニング出来ない俺の場合、その状態で演奏すると、演奏途中でチューニング管が抜けてしまう事故が発生したので、落下防止にスポンジグリップをはめてあるわけだ。
スポンジグリップはホームセンターで80円位で内径15mm、9.8cm長のものが売っていて、それを半分に切ってはめ込んでいる。
プラスチックのパイプを探していたのだが、丁度良いのが見つからず、とりあえずスポンジグリップでやってみたけど、支障は感じないし折角の軽さに影響は無いのでこのように使っている。
そして、トランペットの心臓部と言うかバルブ楽器の最も重要な部分であるピストンはプラスチックトランペットにありがちな独特な形状では無く、メタルトランペットと同じ作りでバルブガイドがあり、その中にスプリングが入っている一般的なタイプになっている。
ただ、最初に入っているスプリングはかなり大きく堅く、ユーホニウムやチューバに遣うレベルのスプリングでトランペット用としては重すぎるバネが入っている。
ただ、この内部はアルミのキャップとステンレスで成形されているのだが、結構堅く、強いスプリングで誤魔化している様にも思える。
スプリングが強いのでそりゃー押し込んでもきっちり戻ってくるわけだが、計測したわけでは無いがメタルトランペットのおおよそ倍くらいの力が必要なつよさで結構早いフレーズなんかは演奏しにくくてしょうが無かった。
音としては合奏にバリバリ使っているが、使っている理由はとにかく鳴る。
軽い吹奏感なんだが、ハイトーン部分もあっさりと吹きやすくて、ハイB♭くらいまでなら普通に演奏出来るので、疲れたときの箸休めじゃ無いが、まだまだハイトーンは練習中なので、これで練習して実際に音を聞いてメタルのトランペットでも出せる様にやっていると、いつの間にかハイB♭まではどれでも吹けるようになったので、後はリップスラーやらトリルやら色々と基礎練習を重ねているわけだが、そんな練習の身でありながらも演奏しているわけで、ハイトーンが必要な時にちょっとプラスチックトランペットに持ち替えて手抜きしている。
手抜きと言ってもちゃんと鳴るんだから良いかなぁと...
ただ、バルブが堅すぎて押し切れずにハーフバルブになる事がしばしばなので、思い切ってスプリングをYAMAHA純正のものに換えてみたのだ。
どうなるかと思ったが、以外にちゃんと動いてくれるので、後は動きがなめらかになれば普通に使えると思ったので強い力が無くてもちゃんと戻るようにバルブ自体を磨いてみたのだ。
バルブを磨くのに使ったのはピカールで液体の缶の方が知られているとは思うが、この練り状ピカールを使っている。
練り状のものは使い勝手も良く液だれしないし、研磨力も結構ありそうな感じだ。
これを使ってバルブ側だけ磨いて本体はよーく磨いた後の汚れた布を通してゴシゴシと何回か磨いてジッポライターの燃料で油を拭き取って仕上げにYAMAHAのバルブオイルでスーパーライトをちょっとだけ塗っている。
これで、演奏中もバルブが戻らなくなると言ったこともなく快適に操作できるようになった。
ピストンは息を入れずに動かして快適でも息を入れると戻りが悪くなったりするので曲を吹きながらレスポンスを確かめてゆっくり戻してもちゃんと戻るか確認しながら再度磨き直したりしてメンテ終了した。
ちょっと手がかかるが、ノーマルのままではとても合奏には使えないのだが、スプリング交換とバルブの磨き直し、チューニングスライドの落下防止は不可欠でそれを持って全く遜色なくプラスチックトランペットと言う新たなカテゴリーとして成立させることが出来た。
プラスチックの特性上、2番バルブ自体が振動してしまい、スプリングと筐体とがバリバリと言うかすかな振動があって、わざと激しく揺さぶるような音を出すと振動も強くなってバルブの割れる音がしてしまうのがプラスチック特有の弱さなんだろうと思うが、かすかな割れ音で、綺麗に振動させれば共鳴しなくなるし、演奏している時はほぼ解らないので問題ないだろう。
まぁ640gしか無いわけで、思いっきり息を入れると筐体の許容を超える振動が起きるのか、大げさな表現をするとバルブが暴れ出す感じはあるものの、音自体が割れるとかそういうことも無く、まず、メタルトランペットとの違いを聞き分けられる人はそうはいないだろう。
音色に関してはマウスピースや演奏方法でかなり改善出来るので、一番良い感じを見つけている段階だが、とりあえず軽く吹き上がる感じがあってバイクで言うと2サイクルのエンジンを回す様に軽く吹け上がるのが結構小気味良いのだ。
今までなかなか出せなかった「はぐれ刑事」のオープニングが演奏出来たことにちょと感動した。(ダブルハイEが最高音のやつ)
このプラスチックでハイトーンの感覚をつかむとメタルトランペットでどう出せば良いのかなんとなく解ってくるので良い練習用楽器としても使えるのが一石二鳥って感じなのだ。
なので、自分でバルブのメンテナンスや色々とカスタマイズするのに躊躇しない人なら良い感じに仕上げる事が出来るが買ったままをそのまま使う人だと、このプラスチックトランペットを合奏で活用しようと思うと相当しんどい気がするとても手がかかる楽器だった。
ただ一度仕上げてしまえば、これがものすごく面白くて、今はすごくお気に入りの一本なのだ。
プラスチックトランペットだけど、これは要所要所委に金属も使っているのでメーカーはハイブリットトランペットと言っている。
完全なプラスチックトランペットでは無いけど、本体は間違いなくプラスチックで、ピッチの正確性を維持するためには内径の精度が重要らしくチューニングスライドが短いのも長くするとプラスチックの特性上内径11.65mmを維持出来なくなるのだとか。
11.65mmはYAMAHAで言うところのMLボアに当たる。
プラスチックトランペットが欲しいのなら迷わずこれをおすすめするが、ちょっとお高い。
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